池袋暴走事故!飯塚幸三「申し訳ございません」

先月19日に起きた“池袋暴走事故”から、はや1カ月。
「上級国民」こと飯塚幸三元院長(87)が18日、初めて公の場に姿を見せた。
警察署に出頭した同氏は顔バレを防ぐためなのか、帽子にサングラスにマスクの“フル装備”。
足元はおぼつかず、杖は“2本持ち”で、警察署の入口では署員に手を借りながら歩を進めた。
取材陣からは矢継ぎ早に質問が飛んだが、飯塚はか細い声で、
「申し訳ございません。すいません。」
「ちょっと手を貸していただける? 申し訳ございません。それだけです。」
と述べるに留まった。
事故では松永真菜さんと3歳の長女・莉子ちゃんが亡くなり、計10人が重軽傷を負った。
同氏もケガを負い、入院。
高齢で逃亡・証拠隠滅の恐れがないと判断され、身体拘束を伴う逮捕はせず、任意での捜査が続けられていた。
この対応にネット上では異論が噴出。
飯塚は東京大学卒業後、旧通産省の元工業技術院長を務め、2015年に瑞宝重光章を叙勲。
輝かしい経歴の持ち主であることから「“上級国民”に対する忖度だ」と拡散された。
この日の事情聴取は5時間に及んだ。
そのなかで飯塚は既報通り「ブレーキが効かなかった」と供述。
飯塚は、被害者に謝罪の手紙を送っていたことも明らかにした。
飯塚幸三の身柄を拘束しない理由

今回の事件は、多数の死傷者が出た誠に痛ましい事故だ。
被疑者の刑事責任は厳正に追及される必要があると思うが、逮捕・勾留して捜査する必要があるかについては別問題である。
刑事訴訟法上、勾留について要件としては、
《罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(犯罪の嫌疑の存在)がある》
➀定まった住居を有しない
➁証拠隠滅のおそれ
➂逃亡のおそれ
上記の何れかに該当する必要がある。
今回のケースだと、➀は満たさず。
問題は、➁または➂の理由があるかどうかだ。
報道によれば、捜査機関は、防犯カメラやドライブレコーダー等の客観的証拠をすでに入手しているとのことだ。
目撃者の供述も確保しているであろう。
被疑者は、すでに任意の事情聴取には応じている。
そうなると、➁「証拠隠滅のおそれ」は低いと判断している。
また、➂「逃亡のおそれ」についても、被疑者が87歳と高齢。
身元もはっきりしていることから、現実的に逃亡するおそれは低いと判断。
このように、逮捕・勾留の必要性が低い一方、被疑者が高齢でケガをしていることから、逮捕・勾留によって身柄を拘束することが相当ではないと判断している。
さて、本件はこの後どうなるのか?
法曹関係者は次のように話す。
「過失運転致死傷容疑で逮捕、起訴は免れない。ただ、その後は2パターンのシナリオがある」
その2パターンとは・・・
池袋暴走事故-飯塚幸三パターン①

1つ目のパターンは、過失運転致死傷罪で「7年以下の懲役、7年以下の禁錮、または100万円以下の罰金」。
ことの深刻さから考え、罰金刑で済む可能性はほぼゼロで、最大懲役7年の実刑判決がくだる可能性がある。
2016年に東京都・立川市の病院で車が暴走して2人が死亡した事故では、国分寺市の高齢男性が自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪で、禁錮2年(求刑禁錮4年)の判決を言い渡された。
裁判官は判決理由で「2人を死亡させた結果は極めて重い」と指摘。
男性は当時83歳だったが「認知機能の衰えに起因する事故ではない」と判断し、執行猶予を付けなかった。
飯塚元院長も警察の聴取にきちんと受け答えできていることから、判断能力に問題なく、執行猶予なしの実刑判決が出る可能性が高い。
池袋暴走事故-飯塚幸三パターン②

もう1つのパターンは、「執行猶予判決」。
逮捕時は大丈夫でも、その後急激に衰えてしまうケースだ。
警察署に出頭した飯塚元院長は1人では歩行困難、誰もが「そもそも運転しちゃいけないレベル」と思ったはずだ。
あれが演技でないとすれば、これから始まる裁判を乗り切れるとはとても思えない。
判決が出た時には自力歩行ができないほどに悪化。
精神的ショックも加わって認知症に陥っていることも考えられる。
高齢者にとって裁判は過酷で、判決が出る前に亡くなる人も中にはいる。
衰弱が進めば、本来なら実刑判決を出すところを、裁判所が執行猶予判決にとどめることも考えられる。
そうなったらなったで、再び上級国民論争が巻き起こりそうだ……。